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ロスト・ハイウェイとシルバー事件case#4.5 FASE

 今回ブログを書いたのは「シルバー事件case#4.5 FASE」 を読み、そして以前から気になっていたデヴィッド・リンチ監督の「ロスト・ハイウェイ」を鑑賞した際に両作品の共通点を見出したのでその考察を踏まえてこのブログを書くことにした。というのも本書に出てくる犯人が「ロスト・ハイウェイ」の犯人にも似ていると思ったからだ。本の紹介も含めてこれから書いていこうと思うがそれにはまず映画の紹介からしたいと思うので映画のほうから話を始めようと思う。

 構成としては最初はロストハイウェイのザックリとした紹介、そして筆者なりの考察。次にシルバー事件CASE#4.5FASEの読んで思ったことを述べていこうと思う。そしてFASEの真犯人について映画のロストハイウェイの犯人と実際にアメリカで起こったある事件、そしてある精神障害と絡めて考察していこうと思う。それでは順を追って説明していこう。

ロストハイウェイを見て~

前から見る見るといいつつもなかなか見る機会がなく今回やっとレンタルして見ること

ができた。実はデヴィッド・リンチ監督の作品はちゃんと見ているようで見ていない。

ツインピークスブルーベルベットマルホランド・ドライブ・・・etc。知っている名

前は数あれどちゃんと時間を取って今まで見てこなかったので思い切ってみようとこの

二作品を選択。というのも、私が敬愛しているゲームクリエイター須田剛一氏の名

作、「シルバー事件」が17年ぶりになんと、HDリマスター化することが決定され、ま

さに狂喜乱舞している最中なのだが、須田氏も影響を受けている(と思う)デヴィッ

ド・リンチの作品をちゃんと見ようと思い、レンタルしてきて鑑賞した。

 

観賞後、・・・なんてすばらしい作品だ!!!と声を叫びたくなったの

を抑えて作品の世界観にただただ愕然と、しかしビビビッっと心に響きまくったのであ

る。と同時になぜ今までリンチの作品を見てこなかったのだろうかと激しく公開してし

まった。以下ネタバレあり。

 

 ロスト・ハイウェイの日本語版の予告。この時点で相当グッとくる・・・!

こちらはインランド・エンパイアの予告。

 上記の二本は例えるなら、悪夢の中にいるような、あっちへこっちへふらふらしていき

現実か、非現実化かわからなくなる作品だ。なので、筋道を立てて追いかけていこうに

も「あれ、ここの場面は現在なの?」とか「これは今誰の視点なんだろう?」とか、考

えても考えてもわからなくなる・・・。ここでざっとあらすじ紹介。

 

ロストハイウェイのあらすじ~

ある朝、ジャズ・ミュージシャンのフレッド(ビル・プルマン)がインターホンに出ると、「ディック・ロラントは死んだ」と不可解なメッセージを言って切れた。

ある日、フレッドと妻のレニー(パトリシア・アークエット)は、玄関前に包みが置かれているのに気づく。中にはビデオテープが入っており、二人の家の玄関先が映っていた。次の日、2本目のテープが届く。そのテープにはカメラが二人の家の内部に入りリビングを抜けて、二人の寝室に移動し、眠る二人が映っていた。

やがて、レ二―が惨殺されるという事件が起こり、その容疑者として逮捕されたのは、切り刻まれたレ二―の死体を映し出すビデオテープに血塗れの姿で映るフレッドの姿だった。

 

 この作品、ジャンルとしてはサイコホラーだと思う。とにかく夢か現実かわからなくな

る描き方がうまい。さすがはデヴィッドリンチ監督。率直な感想としては作中の出来事

を考えながら見れる映画というのを久しぶりに見た気がする。

基本的にはこの作品、一応時系列通りに話は進んでいると思う。というのも最初のイン

ターホンにディックロランドのことについて吹き込まれているがこの時点ではまだ何を

言ってるのかわからない。しかし話が進み終盤のシーンを見るとあのインターホンに吹

き込んだタイミングというのは主人公が「ディックロランド=エディ」を殺した後に自

分でメッセージを吹き込んだことになる。

そして 中盤、刑務所の中で燃えている小屋の映像を見る。そこから先は幻覚&種明かし

のパートだと思う。刑務所から出たように描かれているが実際は出ておらず、主人公が

ただただ刑務所の中で妄想にふけっているのではないか。作中で別人の自動車整備士

ピートという人物になるがあくまであれは主人公そのものの姿でエディを殺すときの

「仮の姿」だと思う。

あれは主人公が殺人を犯すときの姿でディック・ロランドを殺したがそれを受け入れら

れずに別の人格を作り上げそこに逃避した。だから別人の姿になったのではないだろう

か。

 

ディック・ロランド=エディとは妻であるレニーの浮気相手。そしてレニーをポルノ映

画の世界に呼び込んだ張本人でもある。それに気づいたフレッドは愛憎のあまりエディ

を殺し、他の男と浮気=自分を裏切ったレニーに対しても憎しみがあり殺したのではな

いか。逆に考えればそれほど妻を愛していた男の悲劇の話でもある。 

終盤、インターホンに「ディック・ロランドは死んだ」と吹き込まれているがそれだと

最初の時間軸とつながらないので不透明さが気になったがあれは刑務所から出て吹き込

んだのではなく、誰が吹き込んだかを言いたいから入れたんだろうな。つまりピートに

なってからEDまでは、あれは主人公の過去の話なのだと思った。要はネタバラしだと

思う。実際別人になって刑務所から出るが、あれは実際には出ておらずただただ物思い

にふけっているのではないか。だから主人公はあのまま死刑になったんだと思う。

 思うにミステリーマンとは主人公の良心の呵責なのではと感じた。現実逃避をした結果

自分がだれかわからなくなり挙句の果てに違う人物として転生する。ミステリーマン

「おまえは誰だ!」とか「自分の名前を言ってみろ!」とひたすら問いかけていたのは

主人公を現実に引き戻そうとしたのではないだろうか?必死に思い出させようとしたの

はそのためだと思う。 

大まかに疑問に思うことを羅列したが、デヴィッド・リンチ作品は不気味で、どこか神

秘的で見た人を虜にするような不思議な中毒性を秘めているなと改めて感じた。

 

 シルバー事件case#4.5 FASE で思ったこと

そして前から読みたいと思っていた「シルバー事件case#4.5 FASE」を購入。中古品で

4000円した・・・。まあ安くはなかったが読み終えてそれだけの払う価値があったので

個人的に買ってよかったと思う。(※以下本のネタバレあり!本読んでなくて知りたく

ない人は注意を!)

 

話の概要~

行政監査検察局への入局を志願し、主人公・ナツメサクラは、半年間の研修に赴く。研修プログラムの一環として特殊犯罪に関するレポート作成を命じられたサクラは、元刑事でありながら確信犯となり拘留されているコダイスミオと接見する。「自分の闇に触れなければ、犯罪者を理解できないし、捜査官にはなれない」。スミオの言葉に動揺したサクラのもとにある日、連続殺人事件のニュースが飛び込む・・・。 ※本の裏表紙より抜粋~

 

この通り本書はシルバー事件本編に出てくるナツメサクラの視点で話が進む。時系列的

にはシルバー事件本編のエピソード4の後でエピソード5の前。まさに4.5という表記

がふさわしい。ちなみにサクラ自体はゲーム本編の中盤以降、ぽっと出てきて話に絡む

が、筆者としては彼女の過去、正体、そしてなぜ凶悪犯罪課に配属になったか、なぜ自

分がシェルターキッズの一人なのを知っていたかなど、その辺をもっと深く知りたかっ

た身としてはありがたい作品であった。

 

まず率直な感想としてはサクラという人物の意外な一面が見れた。というのも、ゲーム

本編では凛々しく、そして力強い女性だと思ったからだ。しかし今作を読んでみると彼

女が等身大の人間に見えてとても好感を持った。本書ではまだ研修生活を送っているサ

クラは一人前の刑事になるべく、研修過程をまじめに受け目の前の課題をひたすらやる

研修生だ。その姿を見て変な話、自分たちと何も変わらず生活を送っているところを見

てある種身近な存在に感じた。シルバー事件本編に出てくる凶悪犯罪課の面々は浮世離

れというか、変な超人感があり、一人一人のスペックがとても高く手が届きそうにない

雲の上の人たちのように思えたからだ。だからその中で新入りとして入る姿を見て一種

の清涼剤のような、一筋の光のように思えた。ゲームをやっている人ならわかるが彼女

は本編序盤に出てくる特殊部隊を指揮する部隊長のナツメ・ダイゴの娘でもある。

 

また、シルバー事件本編を進めて主人公であるアキラという人物の本当の正体がわかる

場面がある。その正体とはシルバー事件本編でも何か所も出てくる「シェルターキッ

ズ」の一人だということだ。その真実を同じシェルターキッズの一人でもあるサクラの

口から明かされるがその時の彼女の心境は複雑だったと思う。劇中、親であるダイゴの

思い出の品を一つ一つサクラが見るシーンがあるが、その品の中に隠された1枚のディ

スクが隠されているのを発見する。その真実を知った時彼女は愕然とした。それは自分

の幼少期のある事実が入っていたのである。サクラが生まれてから拉致されあの「シェ

ルターキッズ」の一員になっていて自分を「アヤメ・コピー」にするために三角塔に囚

われ内部で行われていた「教育」を施されていたことだ。サクラはそれを読んでショッ

クだっただろう。もしかしたらサクラ自身もいつか「カムイ」同様キリングマシーンで

ある「アヤメ」になるかもしれないのだ。自分が自分でなくなるようなその得体のしれ

ない恐怖は計り知れないものがあっただろう。

 しかしサクラ自身よりもダイゴ自身がその事実に対して一番葛藤を抱えていたと思

う。 本によるとダイゴは独自に「シェルターキッズプロジェクト」を捜査していた。し

かし捜査の進展はほとんどなく、ようやく施設の概要を見つけたときにはプロジェクト

自体が終了した後だった。そこまで行ったにもかかわらずダイゴは自らの捜査の痕跡を

封印してしまった。ダイゴの心境としては複雑だったことは間違いない。

「カムイ」と「アヤメ」、同じ出自で同じ殺し屋、共通の使命を持って生まれ殺し屋と

してその人生を歩む。FSOという政治団体によって「殺し」の宿命を持って作られた人

形のような存在。サクラ自体も最初自分がまさかその一員とは思わなかっただろう。そ

して凶悪犯罪課に所属し、もう一人のカムイであるアキラに会ったとき、きっと運命的

なものを感じたのだと思う。

 

そしてそれ以前の物語である「シルバー事件case#4.5」でも実はアキラと出会う前に

もう一人のカムイと出会っている。それが今作の肝を担っているある人物の存在だ。そ

してアヤメとその人物の関係は、「シルバー事件」という作品を集約したものだと思

う。なくてはならないものでもあり、これがないと始まらない。

全部読んで思ったのが「シルバー事case#4.5 FASE」という物語はとてもシンプル

にカムイとアヤメの邂逅を描いているのだということだ。

 

サワグチ・ミナト トイウソンザイ

サクラは研修の一環で司法解剖の見学の授業が入る。24区内の病院で行われた見学研

修。その授業中サクラは失神を起こし倒れてしまう。医務室を出て病院から出ようとし

た矢先そこでサクラはある人物と知り合う。サワグチ・ミナト。その病院で働いている

医師だ。最初はサワグチのことを警戒していたサクラだが、次第に打ち解け始めるよう

になる。そんな中サクラの親友が殺されるという事件が発生。その頃世間では女性のみ

を狙った連続殺人事件が発生していた。被害者の女性たちの年齢が22歳だったこと、遺

体の状態が同じという共通点があり、世間をにぎわせている「切り裂きジャック」事件

に関連があると確信したサクラは独自に捜査を開始。犯罪現場などを独自に訪れ検証し

ていく最中真犯人と思われる人物から自宅に不審な手紙が届く。自分が狙われている

と気づいたサクラはナツメ・ダイゴの同僚でもあったクサビ・テツゴロウに助けを求め

るために24署に向かう途中サワグチと出会う。車で24署に向かう最中サワグチの提案で

高層ビルに入ることになることになるがそこでサクラは衝撃の真実を知ることになる。

そう。サワグチこそが一連の事件の犯人であり、サクラの親友を殺した張本人でもあっ

た・・・。

 ここまで書いて改めてサワグチという人物を振り返ってみるととにかく哀れで仕方な

い。というのもサワグチは一連の事件の犯人でもあるがもう一つ彼には秘密があった。

それはサワグチが「シェルターキッズ」の一員だったということだ。そして先にも述べ

た通り、彼も「カムイ」であることが判明する。最初から出会うことを仕組まれていた

かのように、ここで「カムイ」と「アヤメ」は対峙することになる。

 本書を読んで思ったことだが「シェルターキッズ政策」の被害者を極めて明確に、そ

してここまで残酷に描いたのはとてもよかったと思う。サワグチは昔から自我に潜むカ

ムイの存在に悩まされていた。何年も自らのアイデンティティの問題に直面し続ける。

ゲーム本編には完全に「カムイ」になった人物は出てきたが、ここまで自我についても

だえ苦しむキャラクターは本編には出てこなかったと思うし、この計画がいかに個人の

人格をゆがめ、犯罪者になる烙印を押すことの恐ろしさがよく伝わってきた。 

今回「ロスト・ハイウェイ」と「シルバー事件case#4.5 FASE」を見比べてみて筆者

ある実際の事件のことを思い出した。作中サワグチミナトは別人格である「カムイ」

なり人を殺しているが、これから説明する実際にあった事件の容疑者と似ているとい

ことに気づいたのでこれをもとに考察してみようと思う。ちなみに「ロスト・ハイウ

ェイ」はデヴィッド・リンチがこの実在の事件にインスピレーションを得てこの映画を

作ったそうだ。

O・J ・シンプソン事件

O・J・シンプソン事件をご存じだろうか?

 1994年6月12日にシンプソンの元妻とその友人の血だらけの死体が元妻の自宅玄関前

で発見されたことからこの事件は始まる。シンプソンは元プロフットボールの名選手で

俳優でも有名であったため裁判の行方をめぐり全米のみならず世界中で注目された事件

だ。殺害現場の血の足跡がシンプソンの足のサイズと一致したり、現場から血の付いた

黒い皮手袋が発見されたという事実もあり、検察はシンプソンを犯人として主張してい

たが手袋のサイズがシンプソンの手に合わなかったことや手袋を発見したという刑事が

人種差別主義者であったこと、警察の証拠管理の杜撰さが目立ってしまったこともあり

最終的に陪審員は全員一致で「無罪」と結論を下し、そのまま無罪判決となった。

 詳しくはwikiを見てもらえるとわかるがここで注目したいのがシンプソンが「オセロ症

候群」だと言われていることだ。

「カムイ」と「オセロ症候群」

ここで「オセロ症候群」について軽い説明をしておく。以下がその概要だ。

オセロ症候群というのはパートナーが浮気をしていると思い込んだり、浮気をしていないことを確かめようと追いつめる偏執狂的な精神病。裏切られる、見捨てられる、強迫観念、嫉妬心、不貞妄想が抑え切れなくなると、暴力に走る。 (引用元:HEALTH PRESSより)

オセロ症候群は幼いころに親から見捨てられるという極度の恐怖を味わった人や裏切りを経験した人がかかりやすい病気。

また、オセロ症候群の背景にあるのは、『二人の関係の終わりに対する不安』であり、その不安は幼少期の母子分離不安から生まれる、境界性人格障害の、『見捨てられ不安』にも類似したもの。

(引用元:クレランボー症候群・オセロ症候群・エクボーム症候群より)

    

healthpress.jp

 

ここでふと思ったのがシェルターキッズは三角塔に入れられてそこで「教育」を受け

るが、状況としてはここで書かれている条件と似ているフシがある。

サワグチはシェルター内で「教育」を受けて自らの中に「カムイ」という人格を生み出

してしまったが同時にその心理状況はこの「オセロ症候群」のような人格障害が生み出

したと考えられないだろうか。シェルターキッズは24区の政治方針で集められた幼児

が殺し屋に育てられ、24区の町に解き離たれてしまう。幼いころ親と離れ離れにされ

てあの三角塔という薄い牢獄に閉じ込められた彼らはその抑圧された場所に隔離さ

れ、親に見捨てられたとい込んでしまう。そして上記に書かれているオセロ症候群の

ような一種の境界性人格害にかかりその不安から余計に別人格を生み出しやすくなっ

てしまった可能性は分考えられる

シェルターキッズの一人であるサワグチも三角塔にいたというのは本書を読めばわかる

が彼もこうした状況に追い込まれた結果人格が不安定になり、「カムイ」が彼の中に宿

ってしまった。

サワグチは以前から自分が自分ではなくなる時がありそれに苦しんでいた。そして「救

世主」を求めて24区内をさまよい特定の年齢の女性を殺害しまくる。自らの「カム

イ」を打ち消そうともがき苦しみながら。そして「アヤメ」であるサクラのもとに行き

つくことになる。サクラの内に秘めている「アヤメ」が自分を救ってくれると信じて。

境界性パーソナリティ障害の場合、これまでの過程のどこかにうまくいかなかった部分

があり、この確かな自分が認識できていない状態で自分の存在を確認したいがため

に、母親や恋人など、身近な存在である対象への一体感を強く求めるそうだ。

 サクラに正体を明かしたときサワグチはまるで母親を求める少年のような状態にな

る。それは普段隠し持っている本音があふれ出てしまったようでもあり、上記で述べた

ような身近な存在への強い執着心が形となって現れてしまった。まるで牢獄である三角

塔に監禁されているシェルターキッズ時代に戻るかのように・・・。

 サワグチが「救世主」を求める理由としてはメシアと一体となれば内なる「カムイ」

消してくれると思ったのではないだろうか? 彼の中で一定のフラストレーションがた

りアヤメという自らを救ってくれる救い主を求めるとき人格が変わりカムイに変貌し

人を犯す。殺人という行為から目を背けるため一種の人格かい離を起こし三角塔で

「教育」を受けたときに根付いた別人格であるカムイに変貌するのではないかと筆者は

推測した。

 O・J・シンプソンは事件当時、「チャーリー」という謎の人物が家に入るのを目撃

し、元妻とその友人を殺害したのを目撃したと供述している。それは何物でもないシン

プソン自身だと思うのだが彼は自分が殺人を行った事実を認めたくない故に架空の人物

である「チャーリー」を生み出してそこに逃避したのではないか。

ロスト・ハイウェイ」のフレッドも人物自身が変わりミュージシャンから自動車整備

のピートに姿を変えたがこれも同じく、妻の浮気相手であるエディを殺害しその事実

ら目を背けたいがあまり架空の整備工を作り上げたのではないか。「ロスト・ハイウ

イ」におけるフレットがピートであり、 シンプソンにとっての「チャーリー」がサワ

グチにとっての「カムイ」なのだろう。

 総評

「シェルターキッズ」計画は敵対する政治団体の組織を排除する「兵隊」を作るた

めの計画だった。しかしそれは結果として自然ではなく意図的に「犯罪者」を作ってし

まうことになる。当時の政治団体が発案したこのアイディアは殺人の芽を持つものを放

出し町中に「犯罪の因子」を広めてしまった。畑に種をまくように。24区という耕され

た土壌に「犯罪」を蒔いたのだ。

24区では我々の現実と同じように日々殺人事件が起きている。それがカムイが引き起こ

したものなのか、それとも関係ない人物が引き起こすものなのかわからない。しかし彼

らが暮らしている世界の裏側で血みどろな政治の駆け引きがあり、主要な3つの政治団

体は形を変え政府の中枢に入り込み依然として抗争が起こっている事は確かだ。「カム

イ」と「アヤメ」という政治の道具に使われた二つの存在は自然と惹かれあいそして対

立する。言うなればそれはカムイとアヤメの戦争なのではないだろうか。今回サワグチ

に殺された4人の女性はまさしくその戦争の被害者だ。しかしサワグチ自身もまた「シ

ェルターキッズ政策」の犠牲者にすぎなかった。

 政府はこの計画を作って何がしたかったのだろうか。もともとは24区というのは従順

な市民を欲しそのための駒を用意するためのシミュレートされた町だ。そのはずがこの

計画を取り入れたせいでその従順な市民が巻き添えを食らってしまった。これは政治家

たちにとっても想定外のことだったのではないか?いや、自らが作った兵器にしっぺ返

しを食らったに過ぎないのかもしれない・・・。

 「シルバー事件case#4.5 FASE」 を手に取り読んでみたが久しぶりに24区の世界に

浸ることができた。新たなカムイに対する解釈もできたし、改めてシルバー事件という

魅力的な作品に出会えてよかったと思う次第だ。本書にはゲーム本編にも出てくるキャ

ラクターは何人か出てくる。ちょっとサプライズでもあるしなんだか久しぶりに会えた

ような、そんな懐かしさを感じた。現在値段が高騰しなかなか手に入れるのが難しいか

もしれないがもし可能ならぜひ本書を手に取ってご自分で読んでほしい。そしてゲーム

をもうクリアしている人は本書を読み、また最初から通してゲームをやると以前とは違

う感触があると思う。ゲーム本編と本書を合わせて一通りやればきっと「シルバー事

件」という1つの作品の世界観が広がり、楽しさも増すはずだ。